2025.06.05
レッドバンデ

馬場入りを前に、何度も頭を上下に振っていた。少々うるさい素振りを見せていたのは、調教ゼッケン3831番のレッドバンデ。今週末、6月7日、東京競馬場で行われる稲城特別(1勝クラス、芝2400メートル)に出走を予定している同馬について、管理する大竹正博調教師は次のように語った。
「普段から少しうるさいところはありますが、走りにはまったく影響していません。走り出すと難しい面は見せず、きちんと走ってくれます」
6月4日、午前7時40分過ぎにダートコースへと入場した。半周ほどじっくりと体をほぐすと、そのままウッドチップコースへ移り、2頭併せの後方から追いかける形で追い切りが行われた。
「前走からあまり間隔が開いていないので、そこまで強い内容にする必要はないと判断しました」
そう説明した大竹調教師。その前走、青葉賞(GⅡ)後には短期放牧に出されており、帰厩後の状態も良好だったという。
「重賞を走った後だったのでダメージを心配しましたが、思っていたほどではありませんでした。むしろ、青葉賞の前に帰ってきた時よりも良い状態で戻ってきてくれました」
その青葉賞では、ややモサっとしたスタートから後方に構える競馬となった。雨のなか、内ラチ沿いを突いて鋭く追い上げ、一時は先頭に立つ場面も見せた。最終的には4着に敗れたが、勝ち馬とはわずか0秒1差。馬体を並べてのゴールだった。
「正直、あそこまで行ったら勝ってダービーに出たかったです」
そう口を開いた大竹調教師は、「でも……」と続けた。
「でも、右トモに弱さがあったり、怪我で調整が遅れたりしたことを思えば、GⅡであれだけ走れるようになったのは本当に立派です」
GⅡで57キロを背負っての好走は、大きな収穫だった。今回の稲城特別は同じ舞台で、3キロ軽い54キロ。しかもクラスは1勝クラスであることを考えれば、好勝負は必至。しかも、実際に状態も良好のようだというから期待は膨らむ。
「トモの疲れの度合いが調子のバロメーターになるタイプなのですが、今回は乗っていてもまったく悪い感じがありません」
鞍上は前走と同じ佐々木大輔騎手。大竹調教師は信頼を寄せる。
「前走後、『最後にソラを使ってしまった感じです』と話していました。あれで僅差の4着だったので、彼も悔しかったと思います。今回はそのあたりを踏まえて、しっかりと乗ってくれると信じています」
最初の入厩当初はダート路線を考えていた時期もあったという。しかし、「怪我から帰ってきたら馬がガラリと良くなっていたので、芝で使ってみることにした」と大竹調教師。その初戦でいきなり目処の立つ走りを見せると、芝2200メートルの2戦目ではあっさりと勝ち上がった。そして前走の青葉賞では、先述の通りの好走を披露。芝の長丁場でこれほど活躍できるとは、嬉しい誤算だった。
「ご覧のようにスタートはあまり上手ではありません。ですから、ある程度距離があったほうがこの馬には合っているようです」
秋には、長丁場の大レースが待っている。その舞台に向かうためにも、ここはぜひとも結果を残したい一戦だ。
(撮影・文=平松さとし)