2026.10.28

ルージュスプリヤ

曇天の京都競馬場。気温は25度、10月25日のこの日は、朝に降った雨も上がり、太陽こそ出ていなかったものの、ときおり風の抜ける心地よい空気に包まれていた。
 3000メートルのGⅠ菊花賞が行われたその日、対照的な1200メートル戦で、まるでその風を切り裂くように先頭を駆け抜けたのがルージュスプリヤ(牝3歳、栗東・斉藤崇史厩舎)だった。
 「スタートしてバラけないうちは、少し噛むようなところがありました。でも、完全に先頭に立ってからは、むしろリラックスして走ってくれました」
 そう振り返ったのは、鞍上のクリストフ・ルメール騎手である。
 この日の第8レースの舞台は芝1200メートルの2勝クラス、壬生特別。ルージュスプリヤは前半を32秒台という速いラップで引っ張った。朝の雨が残る馬場は稍重。決して楽なペースではなかったが、見守った斉藤調教師に不安はなかったという。
 「栗東の坂路でも、引っ張ったまま猛時計で上がってくるようなスピードがあります。この馬のペースとしては、決して無謀ではないと思って見ていました」
 その見立ては、見事に的を射ていた。後半も34秒台でまとめ、1分07秒3の時計で真っ先にゴールへ飛び込む。1400メートルの未勝利戦、1200メートルの1勝クラスに続き、短距離路線にシフトチェンジしてからの3連勝である。2着馬は3馬身半も遅れて、ようやくフィニッシュラインに辿り着くのが精一杯だった。1200メートルという短距離戦での3馬身半差は、圧巻というよりほかない完勝劇であった。
 「すごいスピードの持ち主です。今日の感じなら、上のクラスでも充分に通用するでしょう」
 笑顔を通り越し、驚きの表情さえ浮かべながら、ルメール騎手はそう語った。
 一方の斉藤調教師は、目尻を下げてこう続けた。
 「本当に良いスピードがありますね。これで先々、もっと抑えがきくようになれば、どこまで行けるのか楽しみです」
 新たなスピード女王へ向けて、ルージュスプリヤはどこまで突き進むのか。その快走から、今後も目が離せない。
(撮影・文=平松さとし)