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2025.05.21

スポニチアネックス

【追憶のオークス】05年シーザリオ 名牝が見せた究極の脚 だが鞍上は「誇れない騎乗だった」

 今、見ても強いと思わせる一戦。シーザリオが見せる直線の伸びは出色だ。

05年オークスを制したシーザリオ(手前)。奥は2着エアメサイア、3着はディアデラノビア

 ただ、それは“見る立場”だから言える無邪気な意見なのかもしれない。“乗る立場”から言えば、もっとスムーズに運べば、もっと楽に勝てた…ということになる。名勝負の“矛盾”だ。

 鞍上・福永祐一(現調教師)はレース後、こう言った。「誇れるような騎乗ではなかった」

 単勝1.5倍。オッズの重圧がのしかかる。スタート。わずかに伸び上がったシーザリオ。遅れは「首」くらいか。だが、そういう微差が思った以上に響いてくる。

 数秒後、隣のゲートにいたコスモマーベラスとエアメサイアが前方で接近。視界がふさがれ、シーザリオは下がることを余儀なくされた。

 1角を15番手で回ったシーザリオ。エイシンテンダーが刻む流れはゆったりとしていた。1000メートル通過は63秒1。動きたいところだが、外は横山典・ジョウノビクトリアにしっかりガードされている。福永はこの時、アリジゴクのワナにじりじりとハマっていくような心境ではなかったか。

 4角12番手で直線を向く。ようやく馬群がバラけ、前が空いた。粘るエイシンテンダー。エアメサイア、ディアデラノビアも伸びる。そして、その外。「そして来た来たシーザリオ」。実況が待ってましたとばかりに連呼した。

 闘志をむき出しにして踏ん張る同厩の僚馬・ディアデラノビア。四肢をいっぱいに伸ばして外からかわすシーザリオ。その向こう側にいたエアメサイアも抑え込んだ。着差は「首」「首」。激闘を制したのはシーザリオだった。

 福永からはガッツポーズが出ない。1角付近でようやく軽く右手を上げた。「今日は馬に勝たせてもらった」。お立ち台では馬への感謝がまず、口を突いた。

 「隣の枠が豊さん(エアメサイア)だったので、スタートで遅れるとまずいと思っていたが…。この(時計の出る)馬場だけに前でレースをするつもりだった。イメージと全く違った」

 たしかに、シーザリオといえば、このオークスでの豪快な追い込みが今は印象深いが、それまでの3勝は4角で2~4番手。基本は先行して抜け出すタイプなのだ。イレギュラーな形でも勝ち切る。シーザリオの能力の高さを見せつけた一戦でもあった。

 シーザリオは続くアメリカンオークスも快勝。角居勝彦師の初遠征を見事に飾ってみせた。

 牧場に戻ってからもエピファネイア、リオンディーズ、サートゥルナーリアといったG1馬を出し、それぞれが種牡馬となって今後の日本競馬をけん引しようとしている。

 日本競馬の発展に大きく貢献したシーザリオ。いつまでも語り継いでいくべき名牝であることは間違いない。