2025.06.03
スポニチアネックス
【安田記念】ソウルラッシュ95点 加速力の源“タイソン級”ずんどう首 「魂の突進」を可能にする体つき
◇鈴木康弘氏「達眼」馬体診断

世界王者を倒した大駆けの反動なし!鈴木康弘元調教師(81)がG1有力候補の馬体を診断する「達眼」。第75回安田記念(8日、東京)ではソウルラッシュ、ジャンタルマンタル、トロヴァトーレの3頭をトップ指名した。中でも達眼が捉えたのは馬名通りの「魂の突進」(ソウルラッシュ)を可能にする筋肉のボリューム。“世界最強マイラー”ロマンチックウォリアー(香港)を差し切った前走ドバイターフの疲労は残っていないと診断した。
大金星を挙げた後には反動が出やすいものです。王者を倒すのに限界まで力を出し切って疲弊してしまうのです。たとえば、無敗のヘビー級統一王者マイク・タイソンを東京ドームのリングに沈めたジェームス・ダグラス。あの「世紀の番狂わせ」から8カ月後の初防衛戦で3回KO負けを喫しました。“ザ・グレーテスト”モハメド・アリに判定勝ちしたレオン・スピンクスも次戦でアリにあっさり敗れた。地元・沖縄で14度目の世界王座防衛戦に臨んだ具志堅用高を倒したペドロ・フローレスも次戦でTKO負けしました。競馬でも“皇帝”シンボリルドルフを天皇賞・秋で差し切って大金星を挙げたギャロップダイナは次走ジャパンCで7着。“平成の最強ステイヤー”メジロマックイーンを有馬記念で差し切ったダイユウサクも次走・大阪杯で6着に敗れました。
“世界最強マイラー”ロマンチックウォリアー(香港)をドバイターフで鼻差捉えたソウルラッシュ。大金星を挙げた反動はないのか。目を皿のようにしてチェックしてみました。疲れは毛ヅヤと腹周りに表れるものですが、黒鹿毛の被毛は黒光りしている。腹周りもエネルギーを満タンにしたようにふっくらと張りがあります。岩のように大きくて強い筋肉も昨年のマイルCS優勝時と変わりません。特に目を引くのはマイク・タイソンを想起させる「ずんどう首」。筋肉で極太になった首差しは短距離戦で求められる加速力の源泉です。推進力を生み出すトモと肩の分厚い筋肉も健在。名は体を表すとのことわざ通り、「魂の突進」(ソウルラッシュ)を可能にする体つきです。
顔つきを見ると、口角に泡を付けています。興奮して泡を飛ばしたわけではありません。チェーンシャンクを気にして口から出した唾液が乾いただけです。目や耳、鼻先は前方の一点に集中。立ち姿は昨年のマイルCS以上にリラックスしています。
ただし、まだ太い。全体に余裕がある。ドバイから帰国後、楽をさせたのでしょう。今週の調教と栗東から東京までの長距離輸送で太めを解消しておく必要があります。首尾良くひと絞りできれば、大金星を挙げた後に待っているのはG1・3度目の白星。ロマンチックウォリアーより強いマイラーはいないのですから。(NHK解説者)
◇鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日生まれ、東京都出身の81歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70~72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許取得、東京競馬場で開業。94~04年に日本調教師会会長。JRA通算795勝。重賞27勝。19年春、厩舎関係者5人目となる旭日章を受章。