2025.06.13
スポニチアネックス
98年タイキシャトル以来の日本馬制覇なるか 仏G1・ジャックルマロワ賞
【競馬人生劇場・平松さとし】フランス伝統のマイルG1・ジャックルマロワ賞(8月17日)の登録が発表された。42頭の登録馬の中には、アスコリピチェーノ、ゴートゥファースト、ジャンタルマンタルという3頭の日本馬の名もあった。

ギャロップダイナやテレグノシス、バスラットレオンなど、過去にも日本馬が挑んだ同競走だが、何と言っても思い出されるのはタイキシャトル(美浦・藤沢和雄厩舎)だ。
海外遠征が今よりはるかに困難だった1998年にこの競走に挑戦し、見事に優勝。マイラーとして史上初めてJRA賞年度代表馬に選定される偉業を成し遂げたが、この遠征の裏には試行錯誤の日々があった。
元々、藤沢師は、この遠征に積極的ではなかった。さかのぼること3年の間に、同馬主(大樹ファーム)のクロフネミステリーとタイキブリザードを海外に送り出したが、いずれも期待に応えられず「これ以上、馬主に迷惑をかけられない」という思いが、この遠征に二の足を踏ませたのだ。
さらに当時、同馬主の下、日米愛のGMを務めていたJ・マルドゥーン氏も遠征には否定的だった。欧米の名馬ですら長距離遠征で敗れる場面を数多く見てきたことが、その理由だった。しかし、最終的には「挑戦するなら、日本と似た平たん馬場のジャックルマロワ賞が良い」と、彼自身の口から提案がなされた。
現地入り後も、全て順調というわけではなかった。若き日の藤沢師が英国で4年間修行していた時の友人、T・クラウト師の厩舎に入厩したタイキシャトル。日本と同様、馬なり調教が施された。そんなある日、クラウト師が藤沢厩舎の調教助手に「もっと強く追って負荷をかけた方がいい」と助言してきた。助手がすぐ藤沢師に相談すると、伯楽は静かにこう答えた。
「シャトルのことは君が一番分かっている。だから、周囲の言葉に惑わされず、自分の感覚で調整していきなさい」
結果、馬なり調教を貫き、異国の地でG1制覇という結果をつかんだのだった。
果たして今年、タイキシャトル以来となる日本馬のジャックルマロワ賞制覇があるか。期待したい。 (フリーライター)