2025.06.20

スポニチアネックス

ロイヤルアスコット開催の経験を糧にしたディアドラ

 【競馬人生劇場・平松さとし】英国では今、王室主催のロイヤルアスコット開催が行われている。一方、日本では今週末、府中牝馬S(G3)が秋から開催時期を移行して行われる。この両方に縁があったのがディアドラ(栗東・橋田満厩舎)だ。

プリンスオブウェールズSのパドックでディアドラを引く込山助手(撮影・平松 さとし)

 17年の秋華賞(G1)馬ディアドラは翌18年、アイルランドT府中牝馬S(当時G2)も優勝した。さらに19年以降は世界中を飛び回る。ドバイ、香港、英国、愛国、サウジアラビア、仏国、バーレーンで計12戦。英国ではグッドウッド競馬場でナッソーS(G1)を勝つのだが、その直前に走っていたのが、ロイヤルアスコット開催でもメインといえるプリンスオブウェールズS(G1)だった。

 これが英国遠征後、最初のレースだったのだが、結果は8頭立ての6着に終わると、当時、同馬と共に世界中を巡った込山雄太調教助手は唇をかんで、次のように語った。

 「ニューマーケットで調整したのですが、たくさんの調教場があり、それぞれどのくらいの負荷をかけられるのか、手探りでの調教になりました。その結果、ディアドラの腰に疲れが出てしまいました」

 もちろん、それだけが敗因ではないだろうが、担当する者として彼は責任を痛感。つらそうな表情を隠そうとはしなかった。

 しかし、ただ悲しがっているだけではプロではない。この失敗を受け、改めて調整し直すことで、続くナッソーSを勝つことができた。込山助手はそれまでにもアドマイヤコジーン、アドマイヤマックス、アドマイヤメインらと共に海を越えたが、いずれも勝つことはできなかった。米国遠征が計画されたサイレンススズカとは、渡航を直前にして、突然のお別れをしなければならなかった。それだけに困難を乗り越えてつかんだ勝利は格別の喜びだったそうだ。

 さて、今年のロイヤルアスコットには現地時間21日のクイーンエリザベス2世ジュビリーS(G1)にサトノレーヴ(美浦・堀宣行厩舎)が挑む。果たして今回はどんなドラマが待っているだろう。期待したい。 (フリーライター)