2025.06.25

スポニチアネックス

今浪厩務員ゴールドシップの血継ぐ馬に思いはせ稽古に励む

 日々トレセンや競馬場で取材を続ける記者がテーマを考え、自由に書く東西リレーコラム「書く書くしかじか」。今週は大阪本社の新谷尚太(48)が担当。ゴールドシップ、ソダシなどG1馬を育てた今浪隆利厩務員(66)にスポットを当てた。一昨年に早期退職でいったんトレセンを離れ、今年の年明けにヘルパー(補充員)として現場復帰。自身が携わってはいないがゴールドシップ産駒メイショウタバルの宝塚記念Vというホットな話題もあり、近況を尋ねた。

現役時代のゴールドシップと今浪隆利厩務員

 栗東トレセンで今浪厩務員といえばゴールドシップの名前が真っ先に挙がる。長いキャリアで数え切れないほど多くのサラブレッドに携わってきたが、その中でもやはり特別な存在。G1・6勝で種牡馬入りし、そのゴールドシップの血を受け継ぐメイショウタバルが15日の宝塚記念で父子制覇を成し遂げた。もちろん、今浪さんは自宅のテレビの前で応援していた。「直線に向いて2着馬(ベラジオオペラ)を突き放した時は思わず声が出たよ」。産駒は21年オークスのユーバーレーベン以来、2度目のJRA平地G1制覇。「石橋先生や厩舎の皆さんが一生懸命、育てられて、それが結果につながったんだろうね」と自らの担当馬のことのように喜んだ。

 ゴールドシップはとにかく気性が激しかった。3連覇が懸かった15年宝塚記念は大きく出遅れて15着に大敗。サマーグランプリはいい思い出がある一方で、ほろ苦いレースにもなった。「父子制覇は感慨深い勝利になったよ。脚質は真逆だけど父の荒々しい走りを受け継いだ感じがする。個性的なレースぶりだし、そのあたりはそっくりじゃないかな」と姿をダブらせる。

 自身は一昨年、早期退職でいったん区切りを付け、今年1月にヘルパーとして再びトレセンへ。友道厩舎、上村厩舎を経て今月3日に中尾秀正厩舎に加わった。中尾正氏(元調教師、秀正師の父)の厩舎の元同僚という経緯があり「退職する前から先々、秀正先生から声がかかれば必ず行くと決めていた」。縁があるトレーナーの下で汗を流し、馬づくりに励んでいる。

 現在、担当しているナンテヒダ(牡2、父スクワートルスクワート)は熊本産の新馬。今週、小倉開幕週の九州産限定新馬戦(28、29日に各1鞍、いずれも芝1200メートル)に狙いを定め、順調に稽古を積んでいる。1週前追いは川須を背にCWコースで6F83秒8~1F12秒1としっかり反応し、カセノナユタ(2歳新馬)に6馬身先着した。「追い出してから一気に突き抜けた。動きはいいよ。背中が良く、馬っぷりもいい。走りそうな雰囲気を感じる。この馬も勝って、いい出来事が続いてほしい」と生まれ故郷でもある小倉での新馬勝ちへ、手応えを口にした。常に前向きに仕事に取り組み、一頭一頭に愛情を注ぐ。「シップの子供がG1を勝ってくれた。タバルも種牡馬になって、またその子がG1を勝つ日が来ることを願っていますよ」。夢の続きに思いをはせながら日々、馬と向き合っている。

 ◇今浪 隆利(いまなみ・たかとし)1958年(昭33)9月20日生まれ、福岡県北九州市出身の66歳。小倉競馬場の近くで育って競走馬に興味を抱いたことから馬の道を志した。73年に名古屋競馬で騎手見習い、北海道の優駿牧場勤務を経て77年にJRA厩務員になる。栗東・内藤繁春厩舎、中尾正厩舎に従事し、シングルロマン(86年京阪杯勝ち)やビッグシンボル(97年万葉S勝ち)を担当。厩舎解散に伴い、09年開業の須貝尚介厩舎のスタッフに加わる。ゴールドシップ、レッドリヴェール、ソダシでJRA・G1・10勝。23年6月末に定年を前倒しし、退職した。

 ◇新谷 尚太(しんたに・しょうた)1977年(昭52)4月26日生まれ、大阪府出身の48歳。18年5月から園田競馬を担当、同年10月に中央競馬担当にコンバート。前職は専門紙「競馬ニホン」の時計班。グリーンチャンネル「中央競馬全レース中継」のパドック解説を担当。