2025.07.09
スポニチアネックス
秋山師「日々勉強」 開業4カ月、試行錯誤の日々
日々トレセンや競馬場など現場で取材を続ける記者がテーマを考え、自由に書く東西リレーコラム「書く書くしかじか」。今週は栗東取材班の坂田高浩(40)が担当する。3月に開業した秋山真一郎師(46)を取材。JRA通算1059勝、18年福島牝馬Sで史上5人目(当時)のJRA全10場重賞制覇を達成した名手が昨年ムチを置き、調教師に転身。厩舎の土台を固めようと、試行錯誤を続けている。開業から4カ月が経過した今の厩舎像に迫った。

開業から4カ月。秋山師は調教師としての責任をかみしめながら、足元を見つめて土台を築いている。「日々、勉強です。(管理馬を)競馬場に連れて行くのがまず大変。騎手時代は最後にバトンを渡してもらっていましたが、そこまでがやってみて大変。いろいろな方が関わっているので」としみじみ。調教では管理馬に自らまたがり、スタッフと意見を交わしながら調整を行っている。
騎手時代から思い描いた調教方針がある。「馬にストレスを与えないこと」ときっぱり。「競馬で集中して走ってほしい。ストレスがかかっている馬は凄くイライラしていて、そこまでに消耗してしまう。日々の接し方やメンタルが大事だなって、競馬で乗っていた時から思っていました」と説明した。
一頭一頭の個性を考慮しつつ、逍遥(しょうよう)馬道や角馬場での調整時間を増やしている。「(逍遥馬道は)アップダウンがあるので歩いているだけでいい姿勢になる。やらされているというより、自然と馬がそうなっていくというのがいい」と続けた。水無月Sで12番人気2着に好走したテイエムトッキュウも年齢を重ねて落ち着きが出てきたことから、逍遥馬道や角馬場での調教を取り入れた。ゆっくり歩かせることで、トモに力強さが出てきた。
先週終了時点で3勝。成績については「もっと勝たないとダメです。“貧乏”ですよ」と苦笑いだった。3月22日の初勝利についても、「勝てる馬を預からせていただいたということで感謝しかないです。開業して3週目でしたし、何かしたってわけじゃないです」と振り返る。結果につながるように調教師として考えることは多い。「馬の能力は変えられない。僕には上げることができないので、その能力を出せるようにレース選択やコンディションを整えられるように」と試行錯誤を繰り返している。
調教師としての理想像は騎手時代の師匠だった野村彰彦元調教師と、元騎手の父・忠一さんが師事した小林稔元調教師。「今になってやっぱり凄かったんだと思います」と尊敬の念は尽きない。「騎手時代はG1とかいろいろ勝ちたいレースがありました。身近に感じたんです。ただ今はあまりピンとこない。めちゃくちゃ遠くて離れています。その段階には全然、来ていないです」と現在の立ち位置を分析。謙虚な姿勢を崩さず、着実な厩舎力アップへ。日々の仕事に真摯に取り組んでいる。
◇秋山 真一郎(あきやま・しんいちろう)1979年(昭54)2月9日生まれ、滋賀県出身の46歳。父・忠一さんは元騎手で元調教助手。97年に栗東・野村彰彦厩舎所属でデビュー。12年NHKマイルC(カレンブラックヒル)でG1初制覇。23年12月に調教師免許試験に合格、24年2月に騎手引退。JRA通算1万3543戦1059勝(重賞38勝、G1・2勝)。今年3月に厩舎を開業し、3月22日の阪神4Rバッケンレコードで初勝利を挙げた。調教師成績は77戦3勝。
◇坂田 高浩(さかた・たかひろ)1984年(昭59)11月5日生まれ、三重県出身の40歳。07年入社で09年4月~16年3月、中央競馬担当。その後6年半、写真映像部で経験を積み、22年10月から再び競馬担当に。