2025.07.11

スポニチアネックス

【七夕賞】田中勝師 シリウスコルトで重賞連勝だ!理想は「相撲部屋」

 夏の福島場所は“カツハル親方”にお任せ。今年3月に開業した田中勝春師(54)が、七夕賞にシリウスコルトを送り込む。騎手時代に3勝した相性抜群のG3。新潟大賞典での厩舎初タイトルに続き、今度は史上3人目の騎手&調教師Vを狙う。

シリウスコルトで七夕賞に挑む田中勝師(撮影・郡司 修)

 暑さがアドレナリンの分泌を促して活気づくような男を「夏男」と呼ぶ。猛暑が続く美浦トレセン。田中勝春厩舎に足を向けると、シリウスコルトの馬房の中からカイバをかみ砕く音が響く。「頭を振りながらバリバリ食べているよ」。厩舎スタッフに“親方”と呼ばれる元祖夏男は笑顔を振りまいた。「北海道人は春先まで雪で動けないから夏が稼ぎ時なんだ」。騎手時代には夏の重賞がドル箱。七夕賞も3勝を挙げた。現役最後の重賞タイトルも3年前のこのレース。騎手&調教師での七夕賞制覇がなれば史上3人目の快挙だ。

 そんな願いをかなえてくれるのが夏男シリウスコルトの旺盛な食欲。「一生懸命食べて、一生懸命稽古して、一生懸命休むのが相撲取りの基本。馬にとってもそれが一番大事だからね」。3月の開業時、理想の厩舎像を問われて「相撲部屋」と即答した“親方”はこう続けた。「シリウスコルトは重賞を1つ勝ったばかりだから大相撲でいえば新三役。挑戦する立場だけど、びっくりするほど走り方が変わってきた」。デビュー前の調教に騎乗したのは騎手最後の年。前肢に重心が掛かり過ぎる“前輪駆動”のようなフォームだった。いまでは前後肢のバランスが取れた四駆の走法。四股を踏むように調教を重ねながら後肢がパワーアップしたのだ。

 元1800勝ジョッキーだけに騎手の起用法もさえている。定年解散した宗像厩舎から移籍後、古川吉に依頼して2、1、1着の快進撃。「依頼した理由?ふるちゃん(古川吉)はゴルフ友達だからさ」と笑わせるが、人馬の特徴を踏まえての依頼だった。「走ることに前向きな馬だからそこを利用するには…当たりの柔らかいジョッキーに乗ってもらいたかった。ぴったりハマったね」

 北海道日高の牧場で生まれ育った勝春親方が目からウロコの知識を口にしたのは30年前。「馬は目方をキ甲で背負うんだ。体の大きさは関係ないから」。隣で聞いていた横山典も「すげえな、さすが勝春だ」と感心した馬知識。「俺、そんなこと言ったかな?覚えてないよ」と首をひねりながら、「この馬のキ甲はしっかりしているよ」とニヤリと笑った。

 トップハンデ58・5キロも立派なキ甲で克服して重賞連覇を飾れば、その先には…。七夕の短冊に特技のペン習字で願い事を書き込むように「横綱を目指してほしい」と締めくくった。暑さがアドレナリンの分泌を促して活気づく人馬が夏の福島場所の主役だ。