2026.10.15

スポニチアネックス

装蹄師・山本正人さんが語るやりがい しんどいこと9割も…勝利の喜び格別

 日々トレセンや競馬場で取材を続ける記者がテーマを考え、自由に書く東西リレーコラム「書く書くしかじか」。今週は東京本社の鈴木悠貴(35)が担当する。9月23日付「G1 追Q!探Q!」で取り上げた装蹄師の山本正人(45)さんに改めて、日々の仕事の中での苦悩や喜び、思いなどを聞いた。

蹄鉄作業をする山本正人さん(撮影・村上 大輔)

 山本さんは宇都宮競馬場、美浦トレセンでの修業を経て、約10年前に装蹄師として開業した。かつてはエフフォーリア、ウインカーネリアン、オジュウチョウサンなどの名馬を担当。現在は約8厩舎の馬を任されている。1週間のうち、休みは月曜のみ。日々、美浦トレセンで、時には牧場に赴いて装蹄作業を行っている。

 装蹄師は蹄や脚の健康を管理する。筋骨隆々の500キロ近い競走馬を扱うわけだから、ある程度の体力が必要なのは当然として、山本さんが大事にしているのは馬との信頼関係。「なだめたり、時には怒ったりもします。例えば、2歳牝馬は怒らせてしまうと大変なので、当たりがきつくならないように気をつけています」。馬との対話の中で、適切な作業方法を模索していくという。

 人間の爪と同様、馬の蹄もいい状態を保つことはたやすいことではない。近年は競馬もスピード化、さらに難しくなっていると山本さんは言う。「正直、蹄が耐えられていないな、と思う時があります。特に夏は蹄が軟らかくなってしまう傾向があるので、消耗はより顕著です」と現状を明かした上で「特に日本はオフシーズンがありません。どのように蹄を休ませていくか、考える必要があるかもしれません」と装蹄師としての意見を述べた。

 万全の蹄で送り出さなければいけない。そのプレッシャーを毎日感じている。「さまざまな人の未来を背負っている。装蹄のことで何かあってはいけないので…。大変な仕事だと常々思っていますし、しんどいことが9割です」と思いを語った。それでも「担当馬がレースで勝った時に厩舎のスタッフの方から“おかげさまで勝ったよ”と言われると本当にうれしいもんですよ。やりがいしかありません」と充実感をにじませた。蹄なくして馬なし。装蹄師なくして競馬なし。縁の下の力持ちがいることを忘れないでほしい。

 ◇山本 正人(やまもと・まさと)1981年(昭56)3月26日生まれ、栃木県出身の45歳。栃木県立宇都宮白楊高3年時に馬術部で国体出場。在学時に学校に訪問していた装蹄師から誘いを受け、装蹄師の道へ。装蹄師学校を卒業後、宇都宮競馬場で修業し、その後は美浦トレセンで名馬タイキシャトルなどを担当した装蹄師の志賀勝雄さんに師事。15年ほど修業したのち、およそ10年前にJRAの装蹄師として開業。

 ◇鈴木 悠貴(すずき・ゆうき)1991年(平3)4月17日生まれ、埼玉県出身の35歳。千葉大法経学部卒。14年入社、23年1月から競馬担当。