2026.10.21

スポニチアネックス

【菊花賞】杉山晴紀師 原点の菊花賞で大輪を咲かせる「縁のあるレースなのかなと」

 【3冠の頂へ~ロブチェン~(2)】史上9頭目のクラシック3冠制覇に挑むロブチェンの連載企画「3冠の頂へ」第2回は、管理する杉山晴紀師(44)に迫る。20年にデアリングタクトで牝馬3冠を達成した指揮官にとって、人生のターニングポイントになった一戦。調教師でクラシック5レース完全制覇を達成すれば田中和一郎(達成は51年)、尾形藤吉(52年)、武田文吾(60年)、藤本冨良(62年)に続く5人目の快挙となる。

20年10月、デアリングタクトで史上初の無敗牝馬3冠を達成した松山(左)と杉山晴師

 原点である菊花賞で偉業に挑む。杉山晴師を競馬の世界にいざなったのが、中学3年の時に見た96年の菊花賞。ダンスインザダークの雄姿に心を揺さぶられた。「人生の節目、節目で菊花賞があるっていうのは、そういう意味で縁のあるレースなのかなと思います」。感慨深い語り口には、他にも理由がある。

 武宏平厩舎の調教助手時代には調教に携わっていたスリーロールスが09年菊花賞制覇。だが、続く有馬記念のレース中に故障。喜びが大きかった分、忘れがたい悔しさも味わった。15年12月、調教師免許試験の合格記者会見では「調教師として菊花賞を勝てるような馬をつくりたい」と語った。ターニングポイントになった一戦で、史上初の牡牝ダブル3冠制覇が懸かる。

 偉業への序章は20年に無敗で牝馬3冠を達成したデアリングタクトから始まった。桜花賞を制したのは38歳の時。オークスVから直行で挑んだラスト1冠の秋華賞は開業4年目、焦りもあった。「休み明けだったからか、パドックで競馬前に馬が終わってしまうレベルのイレ込み方をしていました。もうそれを見た時は惨敗をするかも…と見ていました。嫌なプレッシャーはありましたし、冷や汗をかきました」と振り返る。

 終わりなき戦いには、選ばれし者しか知り得ない時間が流れている。調教師として菊花賞に初めて挑んだのは21年のアリーヴォ(7着)だった。強力2頭を送り込んだ22年は1番人気ガイアフォースが8着に敗れ、もう1頭のジャスティンパレスは3着に惜敗。昨年も2頭出しするも勝利には届かなかった。

 今回の3冠挑戦は経験と実績を礎に大きな重圧へ立ち向かう。牝馬3冠達成後、この6年間で積み重ねたJRA・G1は5勝、リーディングトレーナーには2度(23、25年)輝き、今年も53勝でトップを独走。「厩舎としての経験も積ませてもらっているし、今回は神戸新聞杯で1回使っているので、あの時のようなプレッシャーとはまた違いますね」と世間が騒ぐプレッシャーにも堂々と構える。

 秋初戦の神戸新聞杯は鼻差の辛勝だったが大外から差し切り、2冠馬としての貫禄を示した。「ロブチェンにとって最初で最後の菊花賞。当然チャンスは1回しかないんで、その1回をちゃんと勝たせることができるようにレースの日までスタッフと一緒に一日、一日頑張っていきます」。愛馬に高貴なる大輪を咲かせるために――。目の奥に光る揺るぎない、まなざしが確かな自信をのぞかせていた。(入矢 美奈)

 ◇杉山 晴紀(すぎやま・はるき)1981年(昭56)12月24日生まれ、神奈川県出身の44歳。04年7月に栗東・武宏平厩舎のスタッフになり、調教役を務めたスリーロールスが09年菊花賞V。14年2月末、師の定年引退による厩舎解散に伴って高橋康之厩舎へ。16年に調教師免許を取得し、同年10月に厩舎を開業。18年目黒記念(ウインテンダネス)でJRA重賞初制覇。23年に年間55勝、25年に61勝を挙げ、2度JRAリーディングトレーナーに輝いた。JRA通算3460戦418勝、うちG1・9勝を含む重賞32勝。

 ≪変わりなく順調≫ロブチェンは火曜朝、気合十分に坂路を4F60秒3~1F14秒3の時計で駆け上がり、水曜の最終追いに備えた。杉山晴師は「今朝も変わりないですね。1週前の段階で形はつくってあります。あとは競馬に向けての調整」と話す。最終追いはこれまで通り、CWコースで半マイル追いを予定。「いつも通り、コースで前に馬を置いて。心身の調整。いつもと一緒です」と終始リラックスした表情だった。