2025.05.23

シャンクス初出走初勝利

5月17日の新潟競馬場。この日の第3レースは芝1800メートルの3歳未勝利戦だった。雨の影響で馬場は稍重、16頭が出走した。
 この時期の未勝利戦らしく、ほとんどの出走馬がすでに複数回のレース経験を積んでいた。そんな中、レースは前半の1000メートルが60秒8という流れ。馬場状態を考えると、未勝利戦としてはやや速いペースだった。案の定、先行勢は軒並み失速し、最後の直線では差し・追い込み勢が台頭する展開になった。
 中でも、ひときわ目立つ伸び脚を見せたのがシャンクスだった。美浦・森一誠厩舎に所属するこの鹿毛の牡馬は、出走16頭の中で唯一の初出走馬。デビュー戦とは思えない堂々とした走りで、最後は2着馬に1と1/4馬身差をつけて抜け出し、既走馬15頭を相手に華々しい初陣を飾った。
 鞍上を務めた黛弘人騎手は、レース後も興奮冷めやらぬ様子で、次のように語っていた。
 「調教の併せ馬でも一度も負けたことがないくらい、常に走る馬でした。ですから、経験馬が相手でも期待はしていました」
 そう語る一方で、初舞台となった1800メートル戦への不安も口にした。
 「とにかく行きたがる気性なので、正直なところ1200メートルくらいが合っていると思っていました。ただ、調教で教え込むうちに少しずつ我慢も効くようになってきましたし、将来のことも見据えて、まずはこの距離で挑むことになりました」
 森一誠調教師は、次のように語った。
 「馬っぷりもいいし、能力があることは調教の動きからも分かっていました。ただ、かなり口向きが難しくて、コントロールが効かないんです。だから、どうしてもオーバーワークになりがちで……。その上で、すでに何戦も走ってきた馬たちとのデビュー戦だったので、正直『どこまで通用するか……』という不安はありました」
 だからこそ、あらゆる対策を講じてこの1戦に臨んだのだった。
 パドックでは極力他馬と距離をとって周回させ、他馬が馬場に向かった後もパドックに残し、1頭だけで最後に入場させた。馬場入り後も初めての実戦に興奮しかけていたが、鞍上は急かす事なく落ち着かせながら、ゆっくりと返し馬へと導いた。
 この日の勝因として、最も大きかったのは、普段の調教から手綱を取ってきた黛騎手が、そのままレースでも騎乗したことにあっただろう。
 「道中はかなりハミを噛んでいました。でも、我慢させることさえできれば、最後は絶対に伸びると思っていましたから、必死に抑えて乗りました」
 調教から長く接してきたからこそ、そうした感触が手の内にあったのだろう。結果的に、鞍上の思惑通りの競馬を見せることができた。
 初出走という不利を跳ね返し、シャンクスを勝利へ導いたパートナーは、レース後、今後についても語っていた。
 「今回は未勝利戦だったので、1800メートルでもなんとか我慢してくれました。これからクラスが上がっても、なんとかマイルから1800メートルくらいまでは対応できるようにしていきたいですね」
 黛騎手、そして今週末のオークス(GⅠ)に桜花賞馬を送り出す若きGⅠトレーナー・森一誠調教師。彼らの手綱の下で、シャンクスが今後さらに飛躍していくことを願ってやまない。
(撮影・文=平松さとし)

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