2025.06.25

スポニチアネックス

軽視禁物!連闘策を徹底解剖 実績抜群の矢作厩舎モデルから導き出した3つの要因

 ◇夏競馬企画 夏レポ

22日函館3R、連闘で勝利したアスゴッド(撮影・千葉茂)

 連闘の馬、何となくで消してませんか?今夏の水曜新企画は「夏リポ」。記者が夏に関するテーマを考え、関係者に質問をぶつけて深掘りする。第2回は大阪本社の田井秀一(32)が担当。夏競馬で企図数が増加する連闘策について、“連闘勝利数リーディング”でぶっちぎり首位の矢作厩舎をモデルケースに買い時を考察した。

 近年の加速度的な飼養管理、物理療法の技術向上は、連闘策の好走率を飛躍的に上昇させた。近5年(20~24年)で連闘した馬の単勝&複勝回収率は70%台で、全出走馬の平均値と同等。その前5年(16~20年)の50%台とは雲泥の差だ。以前は連闘を買わないことが数字上正解だったが、今は軽視不可。特に連闘する馬が増える夏はその取捨が重要になる。

 この分野で他の追随を許さないのが、昨年の全国リーディング矢作厩舎。18年安田記念(モズアスコット)で21世紀唯一となる連闘策でのG1制覇を達成している。レース間隔がタイトだった、とある管理馬の取材中、矢作師が「ウチだから大丈夫」とにやりとしたことがあった。その自信は確かな成績に裏打ちされている。20~24年で厩舎別トップの連闘19勝。次位の武英厩舎が9勝だから突き抜けている。「短いローテで使う時に大事にしているのは疲れをしっかり取ること。それしかない。馬が(短い間隔に)慣れているし、厩舎にノウハウも蓄積されている」と胸を張っていたのが印象的だった。

 回復術のノウハウは…もちろん企業秘密だが、攻め専(調教騎乗がメイン)の荒木助手も「連闘する馬は基本的に疲れを取ることに専念」と異口同音に語る。週中は馬をリラックスさせ、体調と歩様を確認して出馬投票。予定通りの連闘の他、前走が消化不良だったケース、相手関係や時には気候にまで目を配って「数を使いながら勝たせることが厩舎の方針。馬が健康な時に勝てるように」柔軟に番組を選択する。

 それを下支えするのはスタッフの理解。「担当者も常に“連闘のチョイスがあるかも”と頭に入れて、先手を打って馬をケアしている。先生の(番組選択の)閃(ひらめ)きがよく当たるので、その閃きを阻害しないように」と荒木助手。まさにあうんの呼吸。15~19年は連闘勝率が6・1%だったのに対し、20~24年は同11・6%と倍増。冒頭の師の言葉通り、ノウハウが蓄積されて練度が増している。

 さて、本題。どう馬券に生かすか。荒木助手の話をヒントに、近5年の矢作厩舎の連闘成績をモデルに買い時を考察していく。

 <1>経験値 人も順応するならば、馬もそう。年長馬の好走率が高く、5歳以上は勝率21・7%、単勝回収率245%だった。「古馬にかけて連闘に耐え得るように成長していく」ため、経験を積んだベテランは要警戒。

 <2>場選択 「基本的に連闘は近場で」と19勝のうち11勝が阪神、京都、中京の当日輸送圏だった。ただし、「1泊した方がいい馬もいる」とのことで“遠征連闘”は当地実績の確認を。ちなみに、連闘で安田記念を勝ったモズアスコットは全7勝のうち4勝を東京で挙げた“1泊巧者”だった。

 <3>馬体重 連闘で10キロ以上減っていればダメージを心配したくなるが、結果を見ると勝率42・9%、単勝回収率445%。名門が無理使いすることは考えにくく、大幅減は“計画的”連闘による上積みの可能性が大。あくまで「体重の数字の変化は結果的なもの」だが、一変を捉える手がかりにはできる。

 最後に、今回の取材を通して厩舎の連闘経験がものを言うことも感じた。近5年の連闘での連対数、勝率、回収率のランキングをまとめた必見の表を掲載する。表に登場する連闘策に長(た)けた厩舎と<1>~<3>の激走因子いずれかがかみ合った時、勇気を振り絞って馬券を買ってみては。

 《先週日曜函館でもアスゴッドが1番人気で連闘V》矢作厩舎は先週日曜に函館ダート1000メートルの3歳未勝利でアスゴッド(牡)が厩舎所属の古川奈とのコンビで1番人気に応える連闘V。前週2着からきっちり前進し、待望の初勝利を挙げた。同日、阪神芝2400メートルの3歳未勝利では同じく連闘策のホウオウレイヴン(セン)が2着。惜しくも初勝利はならなかったが次につながる競馬だった。今年の連闘実績は先週4頭を合わせて【3・2・1・22】で勝率10.7%、連対率17.9%、複勝率21.4%にアップ。先週出走したメンバーでは2勝クラスのSTV杯で13着だったルージュシュエット(牝4)が今週函館の渡島特別(ダート1700メートル)、湯の川温泉特別(芝1200メートル)にダブル登録している。