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2025.06.25

スポニチアネックス

【追憶のラジオNIKKEI賞】94年ヤシマソブリン ダービー3着馬が不当な?3番人気を覆す快勝劇

 「生まれてきた時代が悪かった」とは競馬においてよく聞く言葉だ。ヤシマソブリンも、その言葉が当てはまる1頭であることは間違いない。同期の代表格は、あのナリタブライアン。それでもヤシマソブリンは、その最強馬に懸命に食らいついた1頭として、オールドファンの記憶の中に鮮明に残っているだろう。

94年ラジオたんぱ賞を制したヤシマソブリン

 そのヤシマソブリンが唯一、制した重賞が94年ラジオたんぱ賞(現ラジオNIKKEI賞)。「えっ、重賞1勝だけ?」と思うだろうが、実はそうなのだ。他にオープン特別を3勝しているが、オープン特別ではこうして後世に語り継ぐことも難しい。よくぞ、この重賞を勝っておいてくれた、というのが正直な感想だ。

 さて、その一戦。オッズを見て「?」と筆者は思った。ダービー3着からの臨戦であるヤシマソブリンは3番人気。1番人気は毎日杯2着から挑んだ「マル外」タイキブリザードで、最終的に単勝は1.7倍の人気を集めた。2番人気はダービー8着のオフサイドトラップだった。

 詳しくは思い出せないが、タイキブリザードを管理する藤沢和雄師(引退)の手腕が注目され始めた頃だったのか。オフサイドトラップは皐月賞7着、ダービー8着だったが、その前の3連勝が改めて評価されたのかもしれない。ちなみに両馬はともに、のちにG1を制している。それでも…ヤシマソブリンはちょっと人気がなさすぎだな、と思ったことは強烈に覚えている。

 レースはヤシマソブリンの完勝だった。これぞダービー3着馬という走りだった。

 4枠4番から中団のインを進んだヤシマソブリン。先行したプリンセストウジンを2番手追走のタイキブリザードが勝負どころでかわして先頭だ。

 だが、そのタイミングを見逃さなかったのがヤシマソブリンの坂井千明騎手。タイキブリザードにグッと迫り、叩き合いに持ち込む。こうなれば追う者の強み。ヤシマソブリンが前に出て、半馬身差つけてフィニッシュ。初重賞制覇を決めた。

 「3角でハミを取ると、グングン行きだした。反応が良かったし、思い通りの競馬ができたよ。満点だね」。職人・坂井騎手の言葉が弾んだ。さすがダービー3着馬。勝負どころを馬が知っている。

 松山康久師(引退)にとっても負けられない戦いだった。この日は有力馬を次々と福島に送り込み、9R尾瀬特別(リブオンワード)、10Rあさがお賞(スリーダイヤモンド)で福島特別パーフェクトを達成。中京のメイン、東海S(当時オープン)も管理馬プロストラインが3馬身半差つけて圧勝し、東西の厩舎を通じて、この年の20勝一番乗りを果たした。

 「一日4勝なんて初めて。こりゃ異変です」とおどけてみせたトレーナー。だが、師の心を察するに、ヤシマソブリンで負ける気は全くなかったはずだ。

 夏を休養にあてた後、ヤシマソブリンは再度、福島に赴き、福島民報杯を快勝。勢いをつけて菊花賞に挑んだが、ダービーに続いてナリタブライアンの前に散った。7馬身差の2着。完敗ではあったが、エアダブリン(3着)、スターマン(5着)には先着し、関東の意地を見せてくれた。