2025.12.04
スポニチアネックス
開業2年目、千葉直師のこだわりが詰まった新厩舎 馬も人も「生き生きと」
日々トレセンや競馬場で取材を続ける記者がテーマを考え、自由に書く東西リレーコラム「書く書くしかじか」。今週は東京本社の後藤光志(29)が担当。現在、美浦トレセンでは厩舎の改築工事が進行中。今秋から年明けにかけて、多くの厩舎が新厩舎へ引っ越しする。開業2年目の千葉直人調教師は10月1日から新厩舎で活動をスタート。師のこだわりが詰まった新厩舎を案内してもらった。
11月下旬、引っ越しから間もない千葉直厩舎を訪れた。敷地内に入ると早速、大きなウオーキングマシンが目に入ってきた。旧厩舎にはなかった設備だ。千葉直師は「導入理由は作業の効率化とスタッフの休みを確保するため」と説明。「ここで運動させることで厩務員さんの手が空くので癖馬に付いていく時間が取れて、結果的に事故の防止にもつながっていると思う」と早くもその効果を実感している。
続いては厩舎内へ。「エアコンと扇風機、冷風機も入れています。涼しい方が回復が早いし、活力や馬のやる気も変わってくるので」と、夏場の暑さ対策を徹底。併設されている馬料庫についても「害虫、害獣対策で密閉できるようにしている。馬には最適なものを食べさせてあげたい」とエアコンを使用し、品質をしっかり管理している。
洗い場には季節に合わせたこだわりがある。夏場は馬の脚元を冷やすため、ステンレス製の管を用いて水を急冷できる装置を使用。スタッフが“開発”したお手製の代物で「めっちゃ冷たいですよ」と師も感謝する。一方で、寒さが厳しい冬場に使用する馬体を温める最新器具も導入予定。「キ甲から臀部(でんぶ)までを電気で温められるものですね。冬にもケアは必要ですから。1、2年後くらいには」と力を込めた。
最後は洗い場の近くにあるゲストルームへ。6畳ほどの室内に2人掛けのソファと、おしゃれなバーテーブル、カウンターチェア、さらにモニターまで完備。厩舎側は一面ガラス張りになっていて、室内から馬の立ち姿を一望できる。「作戦会議をしながら、馬を洗っているところも、装蹄しているところも見られる。オーナー様など、いらっしゃる方に安心して奇麗なところから馬を見て楽しんでいただければ」とうなずく。
他にもスタッフが休息を取る広々とした大仲、馬房や馬具など、紹介しきれなかったポイントはまだまだある。こうした細部へのこだわりは全て馬と関わる人たちのため。「うちは(定年まで)あと31年ある。最初に設備をしっかりしておけば馬も気持ちいいでしょうし、スタッフもやる気に満ちあふれてくれると思う。馬もスタッフも千葉厩舎に来られて良かったなと思ってもらえればうれしいですし、皆に生き生きと頑張ってもらいたいという思いが根底にありますから。そのために自分ができることを頑張ろうと」。指揮官の惜しみない“投資”が実を結ぶ時が楽しみで仕方ない。
◇後藤 光志(ごとう・こうし)1995年(平7)12月8日生まれ、愛知県出身の29歳。中大文学部を卒業後、20年にスポニチ入社。24年4月から競馬担当。