2026.09.15
スポニチアネックス
【追憶の柴田善臣 G1・5勝目】00年高松宮記念キングヘイロー 「気分損なわないように」
JRA騎手の柴田善臣(60)が15日、現役引退を表明した。デビュー42年目でJRA・G1勝利は9回。当時の“ヒーロー原稿”をもとに振り返る。G1・5勝目は00年の高松宮記念。キングヘイローとのコンビだった。東京競馬場以外で初めてのJRA・G1勝利でもあった。(馬齢は現在の表記)
1着 キングヘイロー 牡5 57柴田善
2着 ディヴァインライト 牡5 57福 永
3着 アグネスワールド 牡5 57武 豊
キングヘイローのゼッケンと鞍を手に引き揚げてきた柴田善の笑顔を見たら、もうこらえきれない。がっちり握手をかわし、坂口(正大)師はあふれてくる歓喜の涙をぬぐおうともしなかった。G1挑戦11度目にしてやっとつかんだ悲願のタイトル。喉元につかえていた言いようのない思いが一瞬にして溶け、これまでの苦労が脳裏を駆けめぐった。「こんなにうれしいことで涙を流せるんだから、これが男泣きなんですね」と言って、また白いハンカチで目頭を押さえた。
レース上がりが35秒5もかかるサバイバル戦。先に抜け出したディヴァインライト、アグネスワールドを最後のひと伸びでゴール前きっちり捉えたのも坂口(正大)師の執念だったに違いない。
一昨年のクラシック戦線ではスペシャルウィーク、セイウンスカイとともに3強と目されたが、ただ1頭無冠。その後もG1をあと一歩で勝てず、期待と失望を繰り返してきた。「これだけの良血馬、とにかくタイトルを取らせたい、いや勝たせるのが私の使命だ」との決意を胸にスプリンターズSからフェブラリーSにも出走させベストディスタンスを求め続けた。そんな使い方を中傷する手紙も厩舎に舞い込んだ。苦悩の日々に耐え抜いた末の勲章だった。
悲願をもたらせたのは柴田善。一昨年の天皇賞・秋(オフサイドトラップ)以来4度目のG1制覇、完璧な騎乗だ。「スタート前からいい感じで燃えていたので、気分を損ねないことだけを心掛けた。3、4コーナーで外に振られてヒヤッとしたが、馬の気持ちが切れなかった」と白い歯を見せた。外枠も味方した。「外から馬が来ると走るのをやめてしまう。だから外に馬を置かないでレースをしてくれ」。パドックで師からこんな指示を受けていた。注文通りの騎乗がVゴールを引き寄せた。